他の生徒達もその様子を見ていた。

 何人かの女生徒たちはベアトリスの知り合いだと知って仰天していた。

 ベアトリスもパトリックの存在に気がついて目を丸くする。

「パトリックどうしてここに」

「ベアトリス、僕やっぱり放っておけない。嫌われるのを覚悟で迎えに来た」

「私も、朝、生意気なこと言ってごめんね。パトリックはいつだって私のこと第一に考えてくれてるのに、それなのに私、勝手にバカなこと考えて八つ当たっちゃった。私間違っていた。本当にごめん。迎えに来てくれて嬉しい」

 ベアトリスはパトリックを受け入れた。

 ヴィンセントのことを考えないようにするにはそれが一番の策であり、自分のことを求めてくれるのならそれに甘えるのが楽だと気がついた。

 自分を見失い、全てにおいて流され始めた。

 パトリックはベアトリスの心境の変化にキョトンと突っ立ったまま目をぱちくりした。
 
 ベアトリスは穏やかに立ち上がり、バックパックを肩に掛ける。

「パトリック、帰ろうか」

 そう言うと、ベアトリスは自分を引っ張って欲しいとパトリックの手を握った。

 パトリックは信じられないと驚いた眼差しをベアトリスに向けると、ベアトリスは頷いて微笑み返した。

 パトリックもそれに答えるように、ベアトリスの手を握り返す。

 しっかりと手を繋ぎベアトリスを引っ張って導いた。

「僕を頼ってくれて嬉しいよ」

 パトリックに引っ張られてベアトリスはこれでいいんだと自分に言い聞かせていた。

 周りから見れば二人は恋人同士に見えた。

 ヴィンセントですらそう感じてしまい、耐えられなくなりプイッと横向いてさっさと教室を出て行った。

 ヴィンセントは悲しみと悔しさが入り乱れ、発狂しそうだった。

 感情は辛うじてコントロールされているが、本当のところはまた何かに八つ当たりしたいと葛藤していた。

 「くそっ!」

 絶望感で意識が遠のきそうだった。

 意識を失わないためにも、誰も居ない校舎の裏で、拳で壁を何度も殴る。

 拳から赤い血がポタポタと地面に落ちていた。