全ての授業が終わった後、ベアトリスはそれすら気がつかないほど、ただ座わり続けていた。

「おい、ベアトリス、大丈夫か? 今日一日おかしかったぞ。お前、鬱が入ってるんじゃないのか。あんまり思いつめて自殺なんてするなよ。それは困るぜ」

 コールが話しかける。

「えっ、自殺?」

「もうすぐプロムだろ。せめてそれくらいは楽しめよ。俺がそう言ってるんだから、従っておけ」

 コールは人生最後を楽しくしておけという意味で言っていた。

 そんなことも判らずベアトリスは心配してくれてると勘違いした。

「ありがと……」

 コールはまた上機嫌で去っていった。

 ヴィンセントは一部始終を見ていた。

 あの物置部屋から戻ってきた後、ベアトリスの様子がおかしいことにヴィンセントも気になっていた。

 声を掛けてやりたいが、近づけずヤキモキする。

 そんな時、一部の女子生徒たちが騒ぎ出した。

「あの人誰だろう。見かけないね」

「でもちょっとかっこいいじゃない」

 彼女達の会話が突然ヴィンセントの耳に入ってくる。

 ヴィンセントが振り返ると教室の入り口にパトリックが立っていた。

 ──なんであいつがここにいるんだ。

 ヴィンセントが睨みつけた。

 パトリックはヴィンセントに構うこともなく、教室に入ってベアトリスの机の前までやってきた。