「どうしてあなたがそんなこと知ってるの? 全く関係ないじゃない。また意地悪しようとどこかで情報を仕入れていい加減なことをいってるんでしょ」

「どう思ってくれてもいいけどね。こんなことは俺の知ったことではない。でも俺はあんたの人生に手っ取り早く影響を与えることができる。もしそれを望むなら力になってやるぜ。なーに、容易いことさ。あんたは目を瞑っているだけでいいんだ。そうすれば全ての悩みから解放されるってな訳。楽だぜ。あんたが嫌がっても、俺おせっかいだから、そのうち自ら仕掛けにいってやるよ」

 コールは楽しみと言わんばかりに大声で笑った。

「どういう意味?」

「そのうちわかるさ。さあてと、シャワーでも浴びてくるか。そんじゃクラスでな」

 コールは意気揚々と去っていった。

 ベアトリスは暫く廊下で立ったままコールが言った言葉を考えていた。

 ──両親が事故に遭ったこと、確かに誰も詳しいことを教えてくれなかった。アメリアも絶対にそのことには触れない。それって事故じゃなかったってことなの? 私が子供の頃パトリックと婚約させられたこ とも理由がなければおかしい。だけどもっと他に判らないことが沢山ありすぎる。全てのことを知ってしまったら、私は耐えられるのだろうか。

 ベアトリスは自分の中で溺れ苦しみ喘ぐ。

 誰にも相談できずに一人で抱え込み、真実の詰まった箱を抱きながらどんどん奥深く底が見えない底へと自分が沈みこんでいくようだった。

 みんなが隠すほどの真実。

 それがいいものではないことはベアトリスにも推測できる。苦しさをこれ以上背負い込むほどベアトリスには余裕がない。

 少しの救いを求めて足はある場所へと向かった。