恋の鞘当て、二人は宿敵のように睨み合った。

「パトリック、何してんだ、こんなところで。慌ててるようだが、ベアトリスになんかあったのか」

「ヴィンセント、お前に隠してもしょうがないから言うが、さっきそこでダークライトが女性を襲ってたんだ。そいつが、コールに関係する奴だったんだ」

「お前、コールのこと知ってるのか」

「ああ、一度だけベアトリスと歩いてるときに、すれ違って危機一髪だったことがある。あの時はただのダークライトだと思って、ベアトリスのライトソルーションの効き目もあり、難を逃れたが、後で特徴を知ってコールだとわかった」

「なんだと、まさかベアトリスの正体がばれたんじゃ」

「それは大丈夫だ。ばれてはいない。上手く逃げられた」

「お前が側にいながら、なんて危ないことしてるんだ。事故にも遭うし、それも避けられなかった」

 ヴィンセントはこの時ぞとばかりパトリックを責め立てた。

 自分が側にいられない私怨と嫉妬が入り乱れる。

「ああ、耳が痛いがその通りだ。それについては弁解はしない。ただラッキーだったかもしれないが、難は逃れている。そしてこれからは絶対そんなヘマはしない。しかしお前も人のこと言えないだろう。一番の原因を作ったのは誰だ」

 今度はヴィンセントの耳が痛くなった。

 二人はお互いの罪を擦り付け合う。

 だがそんなことをしても無駄なのは判りきっていた。

「こんなことを言い合っても仕方ない。とにかく、お前の学校で不穏な動きはないか目を見張っていてくれ。僕は学校の中までは入れない」

 パトリックは落ち着きを取り戻し、ヴィンセントに敵意を向けるのはやめた。