週末が明け、ベアトリスは学校に戻ってきた。

 門前でパトリックの見送られてから、教室へと向かう。

 久しぶりの学校。何よりもまず、ヴィンセントに会いたい。

 そればかり頭から離れなかった。

 教室内に足を踏み入れると、一斉にクラスの視線を浴びた。

 交通事故に遭ったことは誰もが知っていだが、心配する声を掛けてくる者は誰一人いなかった。

 そしてジェニファーは鋭い目つきでベアトリスを睨みつけ、まるで戻って来て残念だと言わんばかりだった。

 以前遭遇したジェニファーの異常な行動が、ベアトリスの脳裏にフラッシュすると、忘れたいと強く打ち消した。

 これ以上、惑わされたくないと関わらないことを選択し、そのまま何事もなかったように装って自分の席についた。

 そしてヴィンセントの席に目をやれば、彼はまだ来ていない。

 電話で話してからどんな顔をして会えばいいのかわからず、おちつかずにいると、圧迫されるような人の気配を背後で感じた。

 恐る恐る振り向けば、そこには大きな体のポール、即ち中身はコールだが、ベアトリスを威圧的に見下ろしていた。

 ベアトリスは突然の事に戸惑い、視線をはずせずに暫く顔を見つめた。

「ベアトリス、やっとお出ましか。なんか交通事故に巻き込まれて大変だったんだって。その割には大した傷も残ってなくて元気そうじゃないか」

 一度も話したことのない人から馴れ馴れしく話しかけられて、ベアトリスは眉間に皺を寄せ困惑の表情が隠せないでいた。

「ちぇっ、俺そんなに嫌われてたのか。そりゃこんな体で馬鹿にされるのは仕方ないけど、話しかけても何も言って貰えないのは失礼だぜ」

「あっ、ご、ごめんなさい。その、ちょっとびっくりして。でも心配してくれて声を掛けてくれたんだね。ありがとう」

 ベアトリスは無理してニコッと笑った。

 その笑顔はジェニファーと違った魅力があるのをコールは感じた。

 だがノンライトの体のためにベアトリスの本来の姿までは気づけなかった。

「なるほど、君も中々かわいい子なんだ」

「えっ?」

「ああ、こっちのこと。それよりさ、ちょっと聞きたいんだけど、あんたはヴィンセントのことどう思ってるんだい?」

 ベアトリスの体の温度が急激に上昇し、顔が真っ赤になっていく。

 目線が定まらず、瞳を揺らして動揺していた。

「なんだ、そうなのか」

 コールは二人が両思いだとわかると、ニヤリと冷やかすような笑いをみせた。

 その時、ヴィンセントが教室に入ってきた。