そして、その時、病室の外ではアメリアがパトリックと真剣な面持ちで向き合っていた。

 暫く沈黙が続きそこだけ時が止まった状態の中、アメリアは顔を強張らせて目を瞑っていた。

 葛藤を吹き消すように突然ぱっと目を見開きパトリックを見つめた。

「わかったわ、パトリック。私にはあなたに賛同するしか道は残されていないみたいね」

「アメリア、それじゃ」

「でも、賛同はできても、私はベアトリスに結婚の強制はできない。書類で結婚をさせる証明もいくらなんでも法的に作れるわけがない」

「そんなこと分かってます。でも法的に未成年者の結婚の許可を与えることはできる。それで充分です。そしてあなたが認めてくれれば、これほど心強いことはありません」

「でももう少し待って、今はそのような話をベアトリスに言う時期じゃない。彼女が落ち着くまでまだ私が結婚に賛成したとは言わないで」

「わかりました。とにかく僕はその準備だけは進めておきます」

「準備?」

「ええ、式はどこであげるか、そして結婚後どこに住むか、そう、色々な準備です。もう突き進むしかない」

「パトリック……」

 アメリアはパトリックにまんまと乗せられたような気がした。

 後には戻れない決断だった。

 自分らしくもないと思いつつ、パトリックほど好都合な存在もないこともわかっていた。

 ベアトリスのことを考えているようで、それは自分のことを一番に考えているのと同じだった。

 真実という言葉を出されるたびに、アメリアの心は悲嘆し、いくところまでいくしかないと自棄になっていた。

 それが正しいことかどうか当然判断する余裕など残されてなかった。

 パトリックは満面の笑みを浮かべている。

 それは許可を貰った喜びだけではなく、何かに勝ち誇った優越感の表情が見え隠れしていた。