続いて、ゴードンは数回瞬間移動を繰り返し、なんとかヴィンセントの通う高校の前に辿り着いた。

 学校は授業の真っ只中、辺りは静けさが広がっていた。

 ゴードンはまた瞬間移動で校舎内の廊下に入り、ヴィンセントのダークライトの匂いはないか鼻をくんくんさせた。

 しかし学校の中は広すぎて匂いがひっかからな い。

「いきなり一つ一つ教室入って確かめても、ヴィンセントに見つかったらヤバイし、どうやってヴィンセントの友達探せばいいんだろう」

 ゴードンが指をくわえて考えているうちに、授業が終わるベルが響いた。

 そのとたん教室から生徒達が廊下になだれ込んだ。

「うへぇ、いきなりこんなにノンライトが出てきた」

 ゴードンは人の波にのまれ、流される様に廊下を渡り歩く。そこで会話を耳にした。

「ねぇ、ヴィンセントも休みだけど、もしかしてベアトリスの看病してたりして」

「そんなこと冗談でもジェニファーの耳に入ったらやばいよ。最近あの人荒れちゃってるし」

 ゴードンはさっと瞬間移動でその二人の女性の前に現れた。

「あのぅ、ヴィンセントのこと知ってるの?」

 ずんぐりむっくりの頭の毛の薄いおじさんがいきなり目の前に現れて、二人の女性はびっくりしていた。

 しかし、どこか笑えるその風貌に馬鹿にしたような目つきになり、顔をお互い見合わせてクスクスしだした。

「あーら、私達に何か用かしら?」

「うん、ヴィンセントの友達って誰?」

「ヴィンセントの友達?」

 女生徒二人は顔を見合わせ、からかってやろうと、近くのロッカーで荷物を取っていた男子を指差した。

「あの子よ。ポールっていうの。とっても仲いい友達みたいよ」

「あの子か。ありがとう。助かったよ」

 ゴードンは何も疑うことなく、その男子生徒に近づいた。

 遠くで女生徒二人がくすくす笑いながら去っていった。

「君、ポール?」

「あっ、はい……」

 ポールが返事をするや否や、ゴードンと一緒に姿を消した。