ダウンタウンに位置しながらも、はずれにあるためにあまり人は寄り付かず、素通りされる古ぼけた店があった。

 その大きな汚れたショーウインドウにはアンティークと書かれた飾り文字が入り、古ぼけた汚らしい商品が展示されているのが外から見える。

 そして奥に目をやれば、年老いたぼさぼさの白髪頭の男が一人、レジカウンターらしきところで座って新聞を読んでいた。

 だが次の瞬間、その男は飛び上がり、黒ぶちの眼鏡がずれて顔にひっかかっている状態になっていた。

 その老人の前でゴードンがケタケタとお腹を抱えて笑っている。

「ザック、久しぶり」

「ゴードン、いきなり現れたらビックリするじゃないか。年寄りには心臓に悪い。しかし、なんか用か」

 ザックは眼鏡を調えて、仕方がないと子供を扱うようにゴードンの突然の訪問を受け入れていた。

「うん、ちょっと頼みごとがあるんだ。ザックの力貸して欲しい」

「わしの力か。もうわしも老いぼれて隠居生活をしとるくらいだ、そのわしに何をして欲しいんじゃ」

「僕の友達の意識をノンライトに植え付けて欲しいんだ。ザックなら朝飯前でしょ」

「そりゃ得意な分野だが、なんでそんなことを? ダークライトの中でも全く役に立たない力でそんなこと今まで頼みに来た奴なんておらんかったのに、物好きな奴がいるんじゃのう」

「うん。ただでとは言わない。ほらこれ」

 ゴードンは上着のポケットから宝石や高級腕時計を出した。

「これ新しいものじゃないか。盗んできたのか? しかしゴードン、もしかして、わしの商売を質屋と間違えてないか?」

「売れればいいんじゃないの?」

「まあいいだろう。この年になってはじめての依頼じゃ。受けてやろう」

 しっかりと宝石と腕時計を受け取った。

「わーい。そしたら後でおいらの住んでるところに来て。そこに友達が待ってるから、オイラも意識を乗っ取りたいノンライトを後から連れて行くから」

 ゴードンは喜び勇んでまた姿を消した。

 ザックは呆れ顔になりながらも、閉店のサインを窓際に飾った。