コールはふらふらと倒れるのを必死に堪え、暗闇の中歩いていた。

 服はところどころ赤く点々としたシミがつき、ズタズタに破れ、ボロ布が体にくっ付いてるだけだった。

 よろよろ歩く姿は墓から出たばかりのゾンビに見える。

 怒りと屈辱が入り乱れる中、すがりつくように帰るべき所に向かう。

 だが体は途中で力尽きどさっと倒れこんだ。

 そして再び目を開けたとき、ベッドの中に居る自分を不思議がった。

「コール、大丈夫?」

 蝋燭の揺れる炎の光の中、捨てられた子犬のような、途方に暮れた目をしてゴードンは覗き込んでいた。

 コールの体はところどころ傷の手当てがしてあり、手に巻かれた包帯を目の前に掲げてからコールはゴードンに視線を向けた。

「お前がここまで運んで手当てしてくれたのか」

「うん。色々探したんだよ。きっとここへ戻ってくると思ってたから、この周辺あちこち瞬間移動したよ。それからドラッグストアで色々役に立ちそうなもの取ってきて、適当に薬塗っておいた。これも後で飲むといい」

 ベッドの側のサイドテーブルに山積みされた薬をゴードンは指さし、無邪気に笑っていた。

「そっか、すまなかった」

 コールは一応礼は言ったが、ゴードンに助けられたことに後ろめたさを感じ、目を逸らした。

 ゴードンが親しみを込めた気遣いは胸に針をちくっと軽くつきつけられたような気がした。

 自分らしくもないと表情を強張らせ、毅然とした態度でそれ以上のことを考えないようにした。