ヴィンセントがパトリックから離れようとするが、体が痺れ思うように動けない。

 それを察したパトリックは壁を背もたれにしてヴィンセントを座らせてやっ た。

 廊下で二人、床に並んで座る。

「目覚めたら、野郎の顔だもんな、そりゃ驚くって。しかし10時間以上も、意識を体から離してたんだ、まだ体の自由が利かないんだろう」

 パトリックが静かに語りかけた。

「ああ、少し痺れてるよ。すぐに元に戻るさ。だけど、ベアトリスはどうなったんだ」

「お前を安全な場所に移すことで頭が一杯になってまだ確認してない。危機一髪だったんだぜ。だけどきっと意識を戻してるはずさ。お前が連れ戻したんだろう?」

「ああ、そうだな」

「いい演出してくれるぜ。どれだけハラハラさせられたか。一体何をやってたんだ」

「色々さ」

「まあ、詳しいことは知らない方がいいや。でもありがとうよ」

「お前に礼を言われる筋合いはないさ」

「相変わらずかわいくねぇ奴」

「お前もな」

 二人は暫しお互いの立場も忘れて話していた。

「僕、ちょっと様子見てくるよ。お前は暫くここで休んでな。後で家まで送ってやるよ」

 パトリックは病室に戻っていった。

 ヴィンセントは大きく息を吐き出し、燃え尽きたと脱力して座っていた。

 しかし、表情は薄っすらと笑みを浮かべていた。