「シンシア、起きてちゃだめじゃないか。ちゃんと寝てないと。あれ、その子は?」

「この子はベアトリス。ヴィンセントのお友達」

 シンシアは意味深に笑顔を浮かべて伝えていた。

 リチャードも、隅に置けない息子だと、ヴィンセントを茶化すように目を細めて一瞥を投げかけた。

 ──この時の親父の目は今と違って優しかったんだ。

「おじさん、水を探してる人だよね」

 ベアトリスが聞いた。

 リチャードは驚きの表情を隠せないでいた。

「お嬢ちゃん、どうしてそんなことを?」

「パトリックの家で、あっ、パトリックは私の友達なんだけど、おじさんが水を分けてくれって言ってたの、偶然通りかかって聞いたの。どんなお水が欲しいの? 私も探すの手伝ってあげる」

 ──ライトソルーションのことだ。俺たちがここへ来たのも、ディムライトたちが多く集まる町にはホワイトライトが必ず光臨すると聞いてたからだ。母親の病気を治すために、藁をも掴む思いで、親父はなりふり構わずディムライトに頭を下げに行ってたんだ。ライトソルーションを手に入れるために。そんなことをしても無駄だと判っていたのに。

「お譲ちゃん。心配してくれてありがとう。でも大丈夫だからね」

「うん、だけどその水があれば、おばさんの病気よくなるんじゃないの? 私絶対見つけたい」

 ──親父も母さんも、ベアトリスの言葉に驚いたんだ。この時、ベアトリスは俺の母親をどうしても助けたかった。なぜこんなに人助けがしたいのかこの時はわからなかったけど、ホワイトライトの本能というべき力が無意識にでていたんだろう。引き金さえ引けば、ベアトリスもホワイトライトの力を爆発させるところまで来てたのかもしれない。

 ヴィンセントはひたすら観客になってこの状況を見ていた。