「ヴィンセントならベアトリスの意識に入ることができる。ベアトリスはかつてヴィンセントと意識を共有している。ベアトリスの眠っていたホワイトライトの力を引き出したあの日の出来事。あなたもあのとき側に居たから見てたはずよ」

 パトリックは声にならない驚き方をした。

「ヴィンセントがベアトリスともう一度意識を共有するの。そしてヴィンセントにベアトリスの意識を闇から引っ張り出してもらう。ベアトリスの意識が元に戻れば、記憶の闇は意識の力に制御されてまた元の場所に留まることしかできなくなる。だけど、失敗すればヴィンセントの意識は闇に飲まれて消滅してしまうかもしれない」

「そんなこと、ヴィンセントに頼むんですか」

「判ってるわ。ヴィンセントにこんな危険なこと頼めるわけがない。それに、シールドではじかれて近づけないわ。もう覚悟を決めるしかないわね。ベアトリスに全てを話すときが来たわ。諦めてリチャードを呼びましょう」

「待って下さい。その役目俺が引き受けます」

「ヴィンセント!」

 アメリアとパトリックは同時に名前を呼んだ。

「すみません、ドアが開いていて、カーテンで仕切られていただけだったので、立ち聞きしてしまいました。事故のこと学校で聞いて、すぐにここに駆けつけた次第です。まさか本当の話だったとは」

 ヴィンセントはベアトリスの寝ているベッドまで近づく。

「お前、シールドにはじかれてないじゃないか。ベアトリスのシールドは切れてるのか」

 堂々とベアトリスに近づいたヴィンセントにパトリックは目を見開いた。