親愛なるベアトリス


 君とジェニファーが仲たがいをしてから、僕は君に安易に近づけなくなった。

 僕が君に近づけばもっと君たちの仲を複雑にしてしまうと考えたからだ。

 教室内では適度の距離を保ってしまうけど、僕はいつも君の事を考えている。

 君に迷惑をかけてすまないと思ってる。

 今度ゆっくりと二人だけで君と話がしたい。

 その時はまた僕と一緒に授業をさぼってくれるかい?

 また連絡する。

 ヴィンセント

 

 ベアトリスは手紙を抱きしめる。

 水面のように目が潤んでいた。

 ヴィンセントが自分のことを考えていてくれたことが感激するほど嬉しくてたまらなかった。

 ベアトリスは飛び上がりたいほどの感情を抱え、一人で浮かれていた。

 そこへジェニファーが教室へ戻ってきた。

 ベアトリスが一人でも笑顔で楽しそうに座っている姿が気に食わない。

 足が自然にベアトリスの方へ向かい、殴り飛ばしたいほどの感情が湧いて、殴りかかるために本当に拳に力を込めていた。

 ベアトリスはジェニファーが近づいてることにも気がつかず、ヴィンセントの手紙ばかりうっとりと見つめていた。

 ジェニファーがベアトリスに近づこうとしたその時、ジェニファーの体が沸騰しそうなほど熱く煮えたぎった。

 苦しくて呼吸困難に陥ると、我に返り後ずさった。

 教室内に生徒が次々と帰ってくる。

 ジェニファーはそれに紛れて自分の席に戻っていった。

 ヴィンセントが戻ってくると、ベアトリスはすぐに彼を目で追った。

 ヴィンセントも何が起こってるかわかっているのか、ベアトリスの顔を見なかったが、少し口元を上向きにしていた。

 ベアトリスはそれだけで自分にサインを送っていると感じ取った。

 しかしそれをジェニファーも目を光らせて見ていた。

 体の中で何かが今すぐ暴れろと指示を出す。

 それに葛藤するかのように胸を押さえていた。

 ジェニファーは人目のつくクラスの中だと自制し、まだこの時はなんとか感情を制御できていた。