「私のせいじゃない? まるで何か他に原因があるみたいな言い方ね」

 ベアトリスはパトリックの無茶な慰め方に笑ってしまった。

 パトリックはうまく言えないもどかしさを抱え、言葉を選んで説明する。

「ああ、君は特別な人なんだよ。変な虫がつかないようにするには、最初から人が寄ってこない方がいいんだ。だから寄せ付けちゃいけないオーラが身を守るために出ているだけさ」

「えっ、それって、私には自然に嫌われるオーラが出てるみたい。いくらパトリックが慰めようとしてくれても、なんだか余計に落ち込んじゃうな」

「あっ、そういう意味じゃなくて……ごめん。だけど、そんなこと気にせずに、学生生活は自分のやりたいこと思いっきりやるといい。周りがなんと言おうと、強く自分を信じてごらん。君はなんだってできるんだよ。時にはアメリアの言うことなんか無視する勢いでさ」

 パトリックの言葉はベアトリスの胸に光が差し込むように届く。

 少し勇気が湧いて自然と顔がほころんでいた。

「ありがとう。なんだか今日一日頑張れそうな気がする」

 学校の門の前まで来ると、パトリックはまた後でと手を振り、ベアトリスが校舎に入るまで見送った。

「ねぇねぇ、プロムの相手見つかった?」

 パトリックが女子生徒の会話をすれ違いに耳にした。

「一緒に行きたい人がいるけど、今探りいれてるところ。そういうあんたは」

「私は多分うまく行きそう」

 キャッキャという黄色い笑い声と共に、女子生徒達は校舎へ向かっていた。

「プロムか」
 
 パトリックは小さく呟いて元来た道を戻っていった。