そこは自分のテリトリーでもあり、ベアトリスの住んでる住宅街附近だった。

「コールが近づいた。なぜあそこがわかった。偶然にしてはおかしい」

 テリトリーといっても、すぐ側まで近づかなければそれはわからないようにしていた。

 安易に縄張りを主張すれば、却って怪しまれてしまう。

 そしてあの附近にはいくつもそういった場所をカムフラージュで作っていたにも関わらず、そこに引っかからずに一番知られたくないテリトリーが最初に見つかったことが腑に落ちない。

 リチャードがそこへついたときは、コールの姿はどこにもなかった。

 だが残留の気は残っていた。

「奴はいずれ本格的に動く。これはその奴からの挑戦状なのか。それとも一体何を意味している」

 リチャードはいつもになく動揺していた。

 ブラムが気まぐれに動いたことで、ベアトリス、パトリック、アメリア、ヴィンセント、コールそしてリチャードまでもがこの金曜の夜に心乱されていた。

 ブラムはそれを知ってか知らずか星空の下、広い草原の中で真紅のバラを一本夜空に投げ飛ばした。

「この赤いバラはベアトリス、君に捧げよう。まだ何も知らぬ君。だがそのうち真相から君に近づいていくことだろう。その時は覚悟してくれたまえ……本当に君には誰もが魅了されるよ。この私でさえも」

 空を見上げるブラムの微笑は夜空の星の輝きで憂いを帯びたように見えた。

 ブラムはこれからの成り行きを見守るように星に願いを込めた。