そしてこの日もう一人、頭を悩ませるものがいた。

 リチャードは夕飯の支度中、同僚から事故の連絡が入り、慌てて現場に駆けつけていた。

 自分の担当する地区ではないが、不思議な要素が含まれる事件は些細なことでも連絡をして欲しいと仲間に告げていた。

 事故もまた、目撃証言から得た『突然目の前に二人現れて空中で消えた』という言葉のために連絡を受けていた。

 事故現場でリチャードはダークライトの残留を感じようと感覚を研ぎ澄ます。

 強い気をもつ者は去った後でも多少の存在をリチャードは感じられた。

 この時、ほんの微量のダークライトの気を感じていた。

「やはりそうか。コールは動き出した。そして仲間がいる。瞬時に移動できるもの……ゴードンか。奴はゴードンを利用してホワイトライトを見つけようとしている。きっと罠も仕掛けているに違いない。なるほど、これでわかった。アメリアを襲ったのもゴードンという訳か」

 リチャードは車に乗り込み、おもむろに町中を走り出した。

 鋭い眼差しを至る所に向けた。

 そして赤く滲んだレーザー光線を絡ませたような気の糸を見つけると、スナップでパチンと指を鳴らし、指先から出た青白い炎で焼き尽くしていった。

「こんなことをしても、全部は把握しきれず、いたちごっこになるのは判っているが、ゴードンがこの事に気づくには時間を要するだろう。その間に少しでも危険を回避しなければ」

 リチャードはベアトリスの行動範囲と人が集まりそうな場所を検討しながら、一つ一つ罠がないか確認していった。

 そして夜も更け、疲れも出てくるとリチャードは作業を切り上げようとした。

 家路に向かってるときだった。

 針を突き刺されたような危険信号を、突然肌で感じとった。

 素早く車の向きを変更すると血相を変え車を走らせた。