しかし回すときカチャリと音がすると、驚いた声が同時に聞こえた。

「わぁ、ベアトリス、何してんだこんなところで」

 突然パトリックが目を覚ましてベッドからバネのように体を起こした。

 ベアトリスは毛が逆立つほど驚いて振り返り、手をバタバタとあたふたしていた。

 言葉が出てこない。

 ベアトリスのパジャマ姿とぬれた髪、本能をそそられるようにパトリックはドギマギしている。

「そ、そんな格好で僕の前に現れたら、僕どうしていいかわからないじゃないか。それともまさか僕の寝込みを襲いに」

 ベアトリスは思いっきり首をブンブンと横に振った。

「ご、誤解しないで、電気がついてて、そのいびきかいてて、だから」

 ベアトリス自身、何言ってるかわからなかった。

 パトリックは笑い出した。

「参ったよ、そんなに僕のことが気になってたなんて」

「だから違うって言ってるでしょ! でも、ずっと寝てたの? 寝たふりとかしてないよね」

 ベアトリスはここまで言われて逆切れしてしまった。

 その反動でバスルームに来たことを隠すためにわざといびきをかいたフリをしてたのではとまた疑ってしまう。

「なんだよ、そんなに怒らなくてもいいじゃないか。勝手に君から現れておいて。ああ、すっかり寝てたから、物音で目が冷めてびっくりしたんだよ。気づいていたらこんなにびっくりしないよ。ほら僕の心臓ドキドキしてるよ」

 パトリックはベアトリスの手を引っ張って、ベッドに引き寄せた。

 その力は強く、ベアトリスはパトリックの胸元に倒れるように覆いかぶさった。

「なっ、すごいスピードで動いているだろう」

 パトリックの厚い胸板の上でベアトリスは抱きかかえられていた。

「わかったから、離して」

 今度はベアトリスの心臓がドキドキしだした。

「嫌だ。離したくない。君が悪いんだ。そんな格好でこんなところにくるから。僕抑えられないじゃないか」

「もうやめてよ、また冗談なんだから」

「僕は本気だよ」

 パトリックのその言葉に驚きすぎて、ベアトリスは固まって動けなくなる。

「でも、安心して、何もしないから。暫くこのままでいさせて。とても心安らぐよ」

 パトリックの腕の中は温かだった。

 ベアトリスは判断を失いパトリックに抱かれるままになっていた。