ベアトリスはパトリックの出方を待っていたが、パトリックは一言も発しない。

 感情を一切出さずに黙ってベアトリスを見つめるだけだった。

 付けっぱなしのテレビから聞こえる音は、沈黙の二人に気を遣うことなく好き勝手に流れていた。

 ベアトリスは、パトリックの反応が得られないことに痺れを切らして、再び話し出した。

「ずっとその人のことが、好きだったの。最初は憧れてるだけだった。好きなのにその気持ちを抑えてて、とやかく言うこともなかったんだけど、やっぱり心は嘘はつけないって、本当に大好きなんだなって、ある日気がついた。そしたら、もう自分の気持ちが抑えられなくなって、叶わない恋だけど、でも彼を、この先も思い続けたいの。それが正直な気持ち」

 ベアトリスが様子を見ながら、途切れ途切れになって話しているのに対し、パトリックは余裕にも微笑んでいる。

「本当は知ってたんだ、君に好きな人がいるってこと。七年も離れていたんだ、この間に僕が知らないことがあっても仕方がない」

「パトリック…… それじゃ」

 ベアトリスの言葉をかき消すように、強くパトリックは主張する。

「僕は決して諦めないよ! だってベアトリスは僕を好きになるっていっただろ。それにそいつ、君に連絡して来たのかい?」

「そ、それは、ちょっと複雑な事情があってその」

「ほうら、相手は君のこと何も考えてないじゃないか」

「違うの! 今は自分でもうまく説明できないけど、彼に何か事情があって、私、その、なんていうか、真実が知りたいの」

「真実?」

 パトリックは少し訝しげになった。

「うん。気がかりなことがあるの。それを確かめて……」

 ベアトリスはその後の言葉に詰まる。