パトリックもまた自分が影響を与えた被害者の一人だと思えてならなかった。

 パトリックそしてヴィンセントがベアトリスに思いを寄せる。

 アメリアは側で見ていて辛いものがあった。

 ベアトリスもどう答えを返していいかわからない表情も、三角関係に影響されて複雑な乙女心が垣間見れる。

 ──この危機を乗り越えたら、また心を鬼にしなければならない日が来る。ベアトリスを守るには仕方がない。

 アメリアは二人からベアトリスを遠ざけることを考えていた。

 それは二人の前から姿を消すことであった。

 それが自分の仕事と言い聞かせ、何かを新たに思うときは癖のようにメガネの位置を事務的に整え、すくっとソファーから立ち上がる。

 パトリックには助けを請いながら、その後のことを考えるとさすがに良心の呵責を感じていた。

 嫌われることには慣れていると強がっていながら、逃げるように疲れたと自分の部屋に戻っていった。

 ベアトリスは心配の眼差しを向けていた。

「アメリア大丈夫かしら」

「ああ、大丈夫さ、あの人は鋼のように強い人だよ」

「私はそうは思わない。アメリアは無理をしている。本当は繊細な人なんだって、一緒に住めば住むほどよくわかってくる。私が重荷になってるんじゃないかって思うほどよ。だから私、高校卒業したら就職して一人で生きて行こうって思ってるんだ」

「それならいい就職先があるじゃないか、僕と……」

「その先は言わないで! 結婚は考えてないから」

「ちぇっ、考えてないって酷いな。婚約者なのに」

 ベアトリスは急に真剣な顔になり、パトリックに体を向けた。

「いい機会だから、正直に言うね、実は好きな人がいるの」

 ベアトリスはまっすぐパトリックを見つめたが、パトリックは慌てず慎重な顔をして聞いていた。

 暫く二人は沈黙してお互いの表情を眺めていた。