目撃証言に、二人の人影が突然現れ、そしてまた宙を飛ぶように消えたとあり、それが何を意味しているのかアメリアとパトリックには分かっていた。

「突然現れ消えた……」

 ベアトリスが言いかけると、その話題に触れまいとパトリックがすくっと立って話をそらす。

「あっ、そうだ、チョコレート買ってたんだ。デザートに皆で食べよう」

 パトリックは席を外し、チョコレートを取りに行った。

 ベアトリスはテレビから視線を離し、パトリックの姿を目で追った。

 また再びテレビを見るとすでに他の話題に変わっていた。

 何気なしに口から出た言葉だったが、深く考えることもなく、ベアトリスは再びその話題を話すことはなかった。

 パトリックが目の前にチョコレートの詰め合わせが入った箱を差し出すと、話は自然とそっちに流れた。

「いつの間にこんなの買ってたの。これ高いチョコレートじゃない」

 ベアトリスが珍しいものを見るような目をして言った。

「甘いものを見ると心が優しくなるような気がして、いつもベアトリスのこと思い出すんだ。君に会えなくて寂しいときはよく甘いもの口にしてたな。今日は君と再び会えた記念にとびっきり美味しいのを買ってみたんだ」

 パトリックは自分の気持ちを正直に言ってみたが、側にアメリアがいることに気がつくと、少し恥ずかしさがこみ上げはにかんだ。

 アメリアはここでも罪悪感を感じてしまった。