その同じ時間、暗くなってきても、急ぎ足になることもなくベアトリスはゆったりと住宅街から少し離れた公園附近を歩いていた。

 家に帰ればパトリックが絡んでくる。

 七年ぶりに会ったとはいえ、一日過ごしただけで違和感なく、すっかりベアトリスの生活に入り込んでしまった。

 これからそれが暫く続くと思うと、すぐには家に帰れる気分ではなかった。それは側に居て居心地が良すぎることに惑わされていたからだった。

 空を見上げてうっすらと出ている星を眺めた。

 ヴィンセントに送って貰ったあの日の夕方もこんな空だったと思いながら、ヴィンセントの笑顔を思い浮かべる。

 そんな気持ちの中でパトリックに入り込んでこられると、心は無意識に寂しさを補おうとしてしまう。

 自分のことを思ってくれる優しい人が側にいたら、甘えてしまいそうで、それが自分でも許せなかった。

 すっかり暗くなった公園のはずれ、目の前に人影が見える。

 それは猛スピードで走ってベアトリスに近づいてきた。

 そして手を大きく広げて、ベアトリスに襲い掛かるように一瞬にして包みこんだ。突然のことに驚きベアトリスは声が出なかった。