「ゴードン、この入り口のガラスのドア全部に細工できるか?」

 コールがそういうと、ゴードンは早速息を思いっきり吸って口をもごもごさせた。

 その時コールはキーンと頭を何かが突いたような痛さを感じた。

 ベアトリスはちょうど反対側の端に位置するドアを開けようとしていた。

「なんだこの感覚は」

 コールが一番端のドアを見れば、ベアトリスのドアを押す腕だけが外に突き出して見えた。

 頭を押さえながら集中しようと、側でせわしなく動くゴードンに手のひらを見せ待ったをかけた。

「ちょっと動かないでくれゴードン」

 滅多に感じたことがない異変だった。

「どうしたんだいコール? 早くホワイトライトの罠を仕掛けようよ。早く早く。おいら早く捕まえたいんだ」

 大人なのに、子供のようにピョンピョンとゴードンは飛び跳ねていると、側を偶然歩いていた二人のカップルはジロジロと見ていた。

「バカ! 目立つじゃないか」

「あっ! おいらのことバカって言った。やっぱり本当はバカって見下してるんだ。それならもう協力しない」

 ゴードンがすねて、コールに背を向け来た道を戻っていく。

「おいっ、ゴードン待て、違うってば、そうじゃなくて」

 コールは集中するどころではなくなり、なだめようと後をつけドアから離れていった。

 その間にベアトリスはドアから外に出ると、コールたちのやり取りを横目に、反対方向を歩いていった。続いてパトリックがやっとドアから出て、急いでベアトリスの側に駆けつける。後ろを振り返り、コールたちがベアトリスに何も気がついていないと判ると、胸をなでおろした。

 しかし安心はできないと、今後のために二人の特徴を目に焼き付けていた。