パトリックとベアトリスも同じモールで買い物していた。

「でかいモールだな。ここじゃなくても、その辺の適当なところでよかったんだけど、もしかしてベアトリスがここに来たかったのかい。僕とのデートのためにいいところを選んでくれたんだね」

 また出たかとベアトリスは思ったがもうすでに免疫がついていた。

「ここが一番近かったの。ここなら欲しいもの大体揃ってるからちょうどいいでしょ」

「そして、映画館もある。なるほど一緒に映画っていうのもいいね」

「アメリアを放っておいて映画なんて観てられないでしょう。早く欲しいもの買って帰りましょう」

 ベアトリスが後方にいるパトリックに視線を向けながら前も確認せずに歩いていると、パトリックは走ってベアトリスを片手でさっと抱えた。

 ベアトリスは突然のことにドキリとしてしまう。

 また抗議しようと怒りを露にしようとしたとき、目の前を車がすーっと通っていった。

 車が頻繁に出入りする駐車場では、余所見をしていると危険だった。

「危ないじゃないか。駐車場で轢かれたらどうすんだい」

 パトリックに助けられて、ベアトリスはバツが悪くなる。

 さらにパトリックはベアトリスの手を繋ぎ、幼児のように引っ張っていった。

「ちょっと、子供じゃないんだから離してよ」

「やだ。この手を離したらまた君は危ないことするかもしれない」

 ベアトリスはパトリックの腕を見て、ヴィンセントと手を繋いで廊下を走ったことを思い出すと、それとオーバーラップしてしまう。

 はっとしたとき、パトリックの手を大きく振りはらって、慌ててモールの入り口へ早足で進んでいった。

 パトリックは寂しげな表情で何も言わずに後を静かについて行く。

 モールの中では必要なものを値段も見ずに、パトリックは手当たり次第に買っていく。

 支払いは全てカードを使っていた。

「一応社会人だからね」

 聞いてもないが、ベアトリスが口を開けてみていることに、パトリックは心配ご無用といつもの笑顔を振りまいていた。