──ライトソルーションの影響をかなり受けてるバスルームだ。なるほど、ライトソルーションの混じった湿気が溜まりこんでこのバスルームの全てのものに浸透しているのか。この中にいれば体の表面まで付着するってことか。


「ねぇ、このバスルーム、僕も使っていいのかな」

「えっ、うん、そうなるわね。何か不服でも?」

「いや、別に」

「あっ、また変なこと想像してるんでしょ」

「いや、今回はそんなこと滅相も…… 」

 ベアトリスは軽くパトリックの頭を叩こうとするとパトリックは防御しようと両手で頭を庇う。

 その時ベアトリスは彼の指先の絆創膏に再び視線が行った。

 うっすらと血が滲んでいるのを見るとまたはっとした。

 ──まさかヴィンセントもパトリックのようにあの時本当に自分の手を切って血を見せたのでは…… 

 同時に物置部屋の床に滴った血の跡を思い出す。

 そしてベアトリスが触れたことで焦げ付くように煙を出した怪奇現象。

 その部屋のドアの向こうで、ベアトリスに近づくなと命令をして、なぜか苦しんでいたヴィンセント。

 ベアトリスはこれらのことを繋ぎ合わせようとした。

 ──もしかしたら、ヴィンセントは私に近づけなかった。でもそれはどうして? 近づくと彼が困ることになるから? じゃあそれはなぜ? 私に知られたくない秘密があるから? そしたらその理由は?

 ベアトリスは素直に思いつくまま考えてみた。

 そして頭に浮かんだものは非現実的だが、これしか考えられなかった。

 ──彼は人間じゃない……

 顔から血の気が引いて真っ青になっていく。

 だがそれはどんどん確信を帯びてくる。

 ──こう考えれば夢だと思っていた出来事が全て現実味を帯びる。そして赤く染まった不快な空間で、怪物に襲われた時、自分を助けてくれた野獣は……

「まさか!?」

 ベアトリスは思い立ってバスルームを飛び出し、玄関のドアを突き破るように突進した。

「ベアトリス、急にどうしたんだい」

 パトリックはただ事じゃないと後を追いかけた。