高層ビルが立ち並び、人も車もせわしなく動く空間。

 空気も治安もあまりよくなく、それでもそこはいつも大いに賑わう。

 都市のダウンタウンはいつもそういうところだった。

 中心と定められると、どんな人々も集まってくる。

 コールもそのうちの一人のようにキョロキョロとしてダウンタウンを歩き回っていた。

 ここに来れば誰かに会えると思ってるのか、人探しをしているようだった。

 ここのダウンタウンの特徴を挙げれば、歴史に残る事件がいつまでも語られる。

 ある男がビルの5,6階から大統領を狙って暗殺したとかとか。

 そのビルは今は資料館として残り、現在も観光客で賑わいを見せていた。

 誰もが疑問に思うのが、犯人は本当にその男だったのか、それとも他の陰謀説があるのか、映画にもなるほど真相がわかるまで憶測も交えて、永遠に語られる。

 だがダークライトに言わせれば、それもまた自分達の仕業であると豪語していた。

 大きな事件は皆ダークライトが一枚噛んでいる。

 そう疑ってもおかしくないほど、人々の醜い心に入り込んで跋扈するのが奴らの得意とするところ、そうそれがダークライトというもの──。

 この世の中は大きく分けて4つの種族に分けられる。

 身分の高いものから、ホワイトライト、ディムライト、ノンライト、そしてダークライト。

 ノンライトは普通の人間のことだが、彼らは力をもたないために他の者の存在を知らない。

 だが、感覚で天使や悪魔といったものの存在を想像で作り出している。

 ホワイトライトはその人間界でいう天使に位置し、ダークライトは悪魔に位置しているようなものだった。

 そしてディムライトはホワイトライトに選ばれし、特別に力を授けられた元ノンライトのことであり、これもまたノンライトに言わせれば超能力者や霊感の強いものなど、その他色々な能力を発揮して、どれも人間離れした存在と位置づけることだろう。

 まだそこから細かく分ければ色々区分され、ダークライトには影と呼ばれる存在が含まれる。

 これらは人の形をなくし、未練と絶望と醜い欲望の心の塊だけが影となってこの世に留まっている。

 またノンライトの世界で説明するならば、成仏できない霊、悪霊というのがしっくりするかもしれない。

 ダークライトはこれらの影を操り、ノンライトの体に送り込むことができる。

 それが入り込んだノンライトはまさに言葉どおりの魔がさしたような行動に駆られるのである。

 『魔がさす』というノンライトが作った言葉は、すなわちダークライトが入り込むことを無意識に説明しているに違いない。

 そういう存在を感じ、それを想像で作り出すことができても、本当に存在するとは気がつきにくい。

 ノンライトは全く力を持たず、その世界が全てと思い込んで生活しているだけに、例え教えられても確信をもって信じることもできない。

 コールは人探ししながら、すれ違うノンライト達をそういう理由で哀れんではあざけ笑っていた。

 コールが探しているのはホワイトライトに罠を仕掛けられる特殊な能力を持つ男。

 蜘蛛の巣を作るように、気で紡いだ糸をレーザー光線のように手当たり次第に張り巡らす。

 どんなホワイトライトでもそこに触れれば感知して知ることができる。

 コールは近くにホワイトライトが潜んでいることに確信を持っていた。

 それを見つけるためにはその男が必要だった。

「昼間だと、あいつは寝ているのかもしれない。一体どこにいるんだ、ゴードン」