「…菜乃ちゃん、かぁ」 俺の事知ってほしい、なんて思ってしまうのはもう手遅れな証拠だ。 この気持ちの正体を俺は知ってる。 たぶん、いや、きっとこれは彼女を見た時からそうだったのかもしれない。 常備されている飴玉をポケットの中で転がしながら、彼女にどう近づいたらいいのか、どうすれば話しかけられるのか。 なんてことを考えながらもまた俺は彼女を見つめてた。 案外、それが実現する日が近かったことをその時の俺は知らなかった。