脚に乗った重みが退けられる。そして…


「青海!」

 仁科先生が傍らに膝を突き、私を覗き込んだ。


「起きられるか?」

「…ん」

 手を突いてゆっくりと身体を起こす。肘がずきずきと痛む。肘から手首に向けて広くざっくりと擦りむき、血が溢れていた。
 なんとか上半身が起き上がれると、次は膝を立てようと脚を動かす。でも、


「あっ…!」

右足首に激痛が走った。

 もう一度そっと動かすけれど、

「痛ッ!」

上手く脚を立てられない。


「どこ痛い?」

「脚…」

 痛む右足首にぎゅっと手を当てる。


「分かった。取り敢えず移動しよう」

 先生はひとつ頷くと、やにわに私の膝の裏に手を差し入れた。


「えっ…!?」

「このままじゃ進行出来ないから取り敢えずトラックの外に出るぞ」

「あのっ…!」

 言うや先生は有無を言わせずもう一方の腕を私の背に添えて、ひょいと抱え上げた。


(!!)


 応援席から「きゃあっ!」と悲鳴とも歓声とも付かない声が上がる。


「仁科先生、お姫様だっこしてるー!」

「ええっ!?やだ何それ!私もやって欲しい!」


(お姫様だっこ…)


 その響きに顔がぱあっと熱くなる。
 一方で先生は素知らぬ顔で私を抱いて立ち上がる。


「せんせ…」

「ちょっとじっとしてて」

「血が…血がシャツに付いちゃうし…」

「いいよそんなの」