はっと顔をあげると、開け放たれたドアのところに、ジャージ姿の由良くんが立っている。
「どう、して……」
「ひとりじゃないかって思ったから」
走ってきてくれたのか肩で大きく呼吸をしながら、由良くんが一歩踏み出す。
その瞬間、バチンッと突然、図書室の明かりが消えた。
「きゃっ」
思わず悲鳴をもらし、ぎゅっと目をつむる。
するとすかさず駆け寄ってきた由良くんが、私の肩を抱き寄せた。
「大丈夫?」
「うん、大、丈夫……」
由良くんの甘く穏やかな声が、乱れた私の心を落ち着かせる。
暗闇の中で、馴染みのあるシトラスシャーベットの香りが私を包み込んだ。
「部活は……?」
「終わって、着替えようとしてたとこ。よかった、一番に駆けつけられて」