言われてみれば、たしかに遠くから眺めていた頃、由良くんの笑ったところは見たことがなかったかもしれない。
いつもクールで、表情を崩さない印象があった。
でもまさか笑うのが苦手だったとは驚きだ。
「由良くん、よく笑ってくれるから分からなかった」
「なんででしょうね。凛子さんの前では気が抜けて、ふにゃふにゃになる」
カウンターに肘を突いた由良くんが、眉を下げてくしゃりと苦笑した。
「凛子さんパワーかな」
「……っ」
私だけ特別だと、そう言われているんじゃないかって、そんなおこがましい錯覚を起こしてしまいそうになる。
反則すぎるよ、由良くん……。
こっちの気も知らず振りまわしてくる彼を心の中で責めながら、正直に赤くなってしまった顔を慌てて隠した。


