ただただその場から離れたくて、あてもないまま重い足を動かす。
現実を、悪意を、受け止めきれない。
うつむき、力が満足に入らない足でよろよろと歩いていた、その時。
突然どんっと正面からなにかに突っ込むような形でぶつかった。
「――凛子さん?」
すぐ頭上から声が聞こえてきて顔を上げれば、由良くんがそこにいて。
「由良、くん」
はっと我にかえり、彼の薄いけれど男子らしい胸の中から離れようとした時、逃がさないとでも言うように、がしっと肩を掴まれた。
「どうしたんですか?」
「な、んでも……」
ごまかそうとしたのに、私の肩を掴む由良くんの手に添えた手が、震えていた。
そのことに気づいたのは、多分同時だった。
「来て」
短くそれだけ言うと、有無を言わさず由良くんが私の腕を掴んで歩きだした。
私は声を発する気力も残っていなくて、腕を引かれるまま彼の背中を追った。


