日向先輩に会いたい。
話したい。
「てっちゃん、ありがとう。スッキリした」
「おう」
「怒られたらごめんね。今度なんか奢るよ」
「別に。桜音が笑ってたらそれでいい」
「てっちゃんかっこいい」
「惚れんなよ」
「惚れないけど」
「おい」
わたしが笑うと、てっちゃんも笑ってくれた。
さっきまで真っ暗でなにも見えていなかったけど、てっちゃんのおかげで夜明けがきたかのようにあたりが明るくなった。
確かめたい。
自分の気持ち。
わたしはきっと、すでに変わっていたんだ。
「てっちゃん、行ってくる」
「おう、がんばれ」
「うん。やっぱりてっちゃんはいちばんの男友達だよ」
「どうも」
ちょっと恥ずかしかったけど素直に気持ちを伝えると、てっちゃんも照れ臭そうに視線を外しながらこたえてくれた。
手を振ってこの場をあとにする。
気持が逸って気が付けば走り出していた。
先輩との距離を埋めるように、夢中で走った。