整った顔がすぐ目の前にある。

茶色い瞳に見つめられ吸い込まれそう。



「せんぱっ……」

「桜音ちゃんってふわっと甘い匂いするね。食べたくなる」

「た、食べっ……!?」


驚くわたしにイヒヒっと歯を見せて笑っている。

わたしの反応を見て楽しんでいるみたい。


あ、もうだめだ。
なんかおかしくなりそう。

あふれそう。



「逢坂先輩」

「ん?」

「す……」

「隆二」

「あ、楓」

「授業遅れる」

「やば。またね、桜音ちゃん!」

「あ、はい」



逢坂先輩を呼びに来たらしい日向先輩。
その声に反応して、逢坂先輩はわたしに手を振って日向先輩と一緒に行ってしまった。



「……はぁー」


深く息を吐く。
そのままその場に崩れるように座り込んだ。

なんだったんだろう。
こんな急展開、ついていけないよ。


スマホの画面を確認すると、新しく逢坂先輩の名前がある。

それだけで鼓動が速くなる。
昨日の今日でいっきに距離が縮まった気がする。