恥ずかしくて顔に熱が集中する。
そんなわたしに笑ったまま、逢坂先輩が出してほしかったほうのわたしの手を握る。
「行くよ」
しっかりと握った手を引っ張り歩き出す。
もうなにがなんだかわからない。
なにが起こってるの?
「じゃあな、楓」
「…………」
「あ、日向先輩。ありがとうございました!」
「…………」
逢坂先輩に続きわたしもお礼を言う。
でも、反応はない。
少し気になったけど、温もりのある右手に思考はそれ以上進まなかった。
ドキドキが止まらない。
逢坂先輩に手を引かれたまま夜桜の木の下を歩く。
夢心地でふわふわする。
もしかしたらこれは本当に夢かもしれない。
控えめに繋いだ手にぎゅっと力を入れてみた。
それに振り向いた逢坂先輩は、ふっと笑い同じように握り返してくれたから。
胸がきゅんと音を立てた。