*楓side*



「日向先輩、これかわいくないですか?」

「うん、すごくかわいいよ」


洋服を自分に当てている桜音ちゃんが、ね。

ニコニコと癒しオーラ全開の桜音ちゃんがおれだけに笑顔を見せてくれる。


それだけでおれは幸せな気分になる。

こんなにうれしいことはないんだ。


桜音ちゃんがすごく聞きたがっていることを思い出す。

おれが桜音ちゃんをすきになったきっかけ。


だれにも話したことはない。

隆二にも言っていない。


おれだけの秘密。


おれだけの特別な気持ち。



ずっと、この笑顔がおれに向けられることを待っていた。


おれの友達に一途に恋する女の子の笑顔を。