声が聞きたいが電話をする理由になるなんてすごい。
恋人って感じだ。
『……桜音ちゃん』
「はい」
『桜音ちゃん』
「はい」
『桜音ちゃん』
「なんですか?」
『呼んでるだけ。幸せだなって思って』
……日向先輩、甘すぎます。
わたしだって、日向先輩とこうやって話せるだけですごく幸せだよ。
『ずっと、こうして桜音ちゃんに意味もなく電話して声を聞きたかった。これからはいつでもしていいんだね』
「はい。いつでもしてください」
『桜音ちゃんもしてね』
「いいんですか?」
『もちろん。彼女だもん』
あ、やばい。
日向先輩ってやばい。
いくつ心臓があってもたりないよ。
近くにあったお気に入りのうさぎのぬいぐるみをぎゅっと抱き締める。
日向先輩に会いたい。
早く会いたい。
先輩に触れたい。
『やばい、いま自分で言って照れた』
「え?」
『桜音ちゃんが彼女ってやばいね』
「そんなの、わたしだって同じです。日向先輩がか、彼氏だなんて……わたし、彼氏ができるのって初めてだからどうしたらいいのか……」