お前がいる場所が、好き。Ⅰ


「よし、ここだ!」



寺本が足を止めた。見ると、かなり大きい建物を目の前にしている。



「わあ、大きい」



今日は休日なので、少し混雑しているだろうな。
今頃、寺本の兄弟は、みんな楽しんでいるかな。妹さんも友達と合流できたのかな。



「そういえば、本当は妹さんと行くはずだったんだよね? 2人で行くなんて、妹さんとも仲がいいんだ?」



ふと思い出して、わたしは彼に聞いた。



「んー、まあな。1番上の妹って、中学生だから今日も友達優先になっちゃったみたいなんだけど、一応仲は悪くないかな」



「へえ、いいな」



「そういえば、お前。湖に落ちたって言ってたけど、それ自分で落ちたの?」



わたしが自分で湖に落ちたと思っていないらしい。少し考えると、確かにそうだ。何度もあそこに行っているのだから、それでいきなり落ちただなんて、普通はあまりない。



「……うん。うっかりしてたら、落ちちゃった。でも、多分もう少ししたらお母さんが湖に行くことを許可してくれるよ」



「ふーん、まあ、ならいいんだけど」



何気なく寺本は言った。
良かった。これで、もうわたしが湖に落ちたことについて、彼が触れなければいいんだけど。