「よし、ここだ!」
寺本が足を止めた。見ると、かなり大きい建物を目の前にしている。
「わあ、大きい」
今日は休日なので、少し混雑しているだろうな。
今頃、寺本の兄弟は、みんな楽しんでいるかな。妹さんも友達と合流できたのかな。
「そういえば、本当は妹さんと行くはずだったんだよね? 2人で行くなんて、妹さんとも仲がいいんだ?」
ふと思い出して、わたしは彼に聞いた。
「んー、まあな。1番上の妹って、中学生だから今日も友達優先になっちゃったみたいなんだけど、一応仲は悪くないかな」
「へえ、いいな」
「そういえば、お前。湖に落ちたって言ってたけど、それ自分で落ちたの?」
わたしが自分で湖に落ちたと思っていないらしい。少し考えると、確かにそうだ。何度もあそこに行っているのだから、それでいきなり落ちただなんて、普通はあまりない。
「……うん。うっかりしてたら、落ちちゃった。でも、多分もう少ししたらお母さんが湖に行くことを許可してくれるよ」
「ふーん、まあ、ならいいんだけど」
何気なく寺本は言った。
良かった。これで、もうわたしが湖に落ちたことについて、彼が触れなければいいんだけど。



