お前がいる場所が、好き。Ⅰ


水族館に行く日になった。
着る服を選ぶのに30分もかかった。少し大きめの薄い水色の服に、膝丈の白いスカート。


爽やかな色合いが大好きなわたしからすると、これが着られるのが嬉しい。



「じゃあ、お母さん。水族館、行ってくるね」



玄関の方へ足を進めながら、わたしはお母さんに言った。



「ええ、行ってらっしゃい。何かあったら、連絡するのよ! あまり遅くならないようにね」



「はーい!」



紺色のスニーカーを履いて、わたしは家を出た。別に意識しているわけじゃないけれど、少し早めの足取りで塾に向かっていることが分かる。



「おーい、増山ー!」



すでに彼は待ち合わせ場所に到着しているようで、わたしを呼びながら手を振っている彼の姿があった。



「寺本!」



わたしも彼に手を振りながら足のスピードを速める。
今日の寺本は、深緑色のジャケットにジーンズ姿だ。



「ちゃんとチケットは、持ったか?」



「もちろん!」



わたしはトートバッグからチケットを取り出した。



「バッチリだな! じゃあ、早速水族館の行くか!」



「そうだね!」



わたしは彼の後を着いていった。