幸い、寺本はわたしが自分で湖に落ちたと思ったのか、
「ふーん、そうか。じゃあ、しょうがねぇな。待ち合わせは塾の前でいいか」
と、何食わぬ顔で言った。
「うん、ごめん」
「あー、いいよ。別に俺は、おま……て……いから」
今、なんて言ったんだろう。声が低くて小さくて、全然聞こえない。
「ん? なんて言ったの?」
「いや、なんでもねぇ。じゃあな、丸山と青柳、待ってんじゃねぇの?」
「あ、そっか!」
後ろを見ると、確かに奈緒と美咲が少し離れた場所で立っていた。
「ごめんね、2人とも待たせちゃって」
小走りで2人のもとに向かいながら、わたしは言った。
「別にいいけど、なんの話してたの?」
2人がずいずいとわたしに迫ってくる。
「えっと……。水族館にいこうと思って……」
「えっ! それって、デート!?」
美咲ったら、自分のことのようにはしゃいでいる。瞳の中にハートマークまで飛ばしていて。



