それにしてもチケットを買った次の日にドタキャンだなんて。
寺本が気の毒になってきた。



「それで余っちゃったんだ」



「そ。だから、別に無理にとは言わねえけど、お前が行きたいっていうなら2人で行ったっていいけど」



いつのまにか、彼はそっぽを向きながら言っていた。


確かに、水族館なんて最近ずっと行っていない。チケットが余ったままだと、彼も可哀想だし。


なんだか急に行きたくなってきた。



「そうだね。チケットもったいないし、行こうよ!」



「わかった」



ほいチケット、と彼は言いながらわたしに水族館のチケットを渡す。



「ありがと! じゃあ、待ち合わせ場所どこにする? やっぱ塾の前……かな?」



「もしかして湖のこと、忘れたのか?」



「あっ……。覚えてるんだけど」



寺本のことだから、湖で待ち合わせを考えていたんだろう。
それに最近ずっと彼と湖にいなかったので、きっとわたしが忘れたんだと思ったんだろう。



「ごめんね。湖には行けないや。お母さんにダメって言われてるから」



「なんかあったのか?」



「落ちちゃったんだ。あの湖、1人で行った時」



桜花ちゃんのことについて、あまり言いたくない。
こう言っておけば、わたしが自分で落ちたと彼は思うだろう。