家に帰ると、既にお母さんは家にいて、ベランダで洗濯物を取り込んでいた。
「お母さん」
「ん? どうしたの、沙織」
洗濯物を抱えたお母さんは、わたしが帰ってきていることにちっとも驚いていない。
「これのことなんだけど」
わたしは、桜花ちゃんにもらった塾のパンフレットをお母さんに見せた。
「塾のパンフレット? これ、別に必要ないんじゃないかしら。あなた、もう塾に行っているし」
洗濯物をじゅうたんの上に置いてから、お母さんはパンフレットを受け取った。
「うん、そうだよね」
お母さんもわたしと同じ考え方だったのか。
「でも、どうして?」
「同じ学校の子が、わたしにおすすめだって言ってきて……。でも、わたしは今の塾がいいの」
「じゃあ、その子にはちょっと悪いけれど、そう言いなさい」
塾のパンフレットをわたしの手に置いてから、お母さんは言った。



