「その下の名前で決めようって言ったのは、栗原さん?」
「……うん」
そうに決まってるじゃない、とわたしは思った。
わたしは、そこまで知らない人に対して積極的じゃないし、まだ本人の前で桜花ちゃんと言ったことはない。
「そうかー。栗原さん、かなり積極的なのかな?」
美咲は人差し指を自分の頰にあてて、色々と考えている。
「かもしれない。今日、わたしを見つけたら、彼女は急に話しかけてきたんだもん」
「あ……ある意味すごいね。そんなに早く親しくなろうとするって、栗原さん、フレンドリーというか、めちゃめちゃ積極的というか……」
美咲の額に冷や汗が流れている。
「下の名前で呼び合うのは、まあ、いいことなんじゃない? とはいっても、最悪の場合もちゃんと考えておいた方がいいから」
いつのまにか、奈緒が美咲のそばに立っていた。
これ以上、あんまり考え込むようなことはさせない方がいいと思ったわたしは、
「うん。一緒に考えてくれてありがと」
と言って桜花ちゃんの話を終わらせた。
「いいの。親友なんだから、なんかあったら相談するのが当たり前だよ」
奈緒と美咲の優しさがわたしの心に沁みた。



