お前がいる場所が、好き。Ⅰ


変なの、とわたしは思った。
もしも桜花ちゃんのことで丸く収まったら、それはすごくいいことだと思うのに。


桜花ちゃんと寺本が付き合うこととなったら、なんて想像してしまう。
もし桜花ちゃんが告白したら、寺本は受け入れる可能性は低くない。


あんなに可愛らしい容姿をした桜花ちゃんは、誰が見ても不細工には見えないくらいの人なんだから。


たったそれだけのことなのに、そうなると嫌だと思う気持ちが広がりそうで。
理由も分からないのに、なんだか嫌で仕方がない。


わたしなんて髪はただの茶色いセミロングだし、目も唇もそんなに輝いたりしていないし。
「可愛い」と言われたことなら、あるけれど、自分が別に目立つような美少女じゃないことくらい、ちゃんと分かっている。



「ちょっと大丈夫? ねえ、沙織? 沙織!」



気がつけば、美咲に背中を叩かれていた。



「ああ、うん。大丈夫、ごめん。何?」



「栗原さんのことだけど……」



「ああ、桜花ちゃん?」



「え? 何、沙織、もう栗原さんのこと下の名前で呼んでるの?」



面食らった表情で、美咲は聞いてきた。



「なんか、わたしの下の名前が沙織だって寺本に聞いたらしくて、下の名前で呼ぼうって決めたから」



わたしは今朝のことで、このことは2人に言っていなかった。