変なの、とわたしは思った。
もしも桜花ちゃんのことで丸く収まったら、それはすごくいいことだと思うのに。
桜花ちゃんと寺本が付き合うこととなったら、なんて想像してしまう。
もし桜花ちゃんが告白したら、寺本は受け入れる可能性は低くない。
あんなに可愛らしい容姿をした桜花ちゃんは、誰が見ても不細工には見えないくらいの人なんだから。
たったそれだけのことなのに、そうなると嫌だと思う気持ちが広がりそうで。
理由も分からないのに、なんだか嫌で仕方がない。
わたしなんて髪はただの茶色いセミロングだし、目も唇もそんなに輝いたりしていないし。
「可愛い」と言われたことなら、あるけれど、自分が別に目立つような美少女じゃないことくらい、ちゃんと分かっている。
「ちょっと大丈夫? ねえ、沙織? 沙織!」
気がつけば、美咲に背中を叩かれていた。
「ああ、うん。大丈夫、ごめん。何?」
「栗原さんのことだけど……」
「ああ、桜花ちゃん?」
「え? 何、沙織、もう栗原さんのこと下の名前で呼んでるの?」
面食らった表情で、美咲は聞いてきた。
「なんか、わたしの下の名前が沙織だって寺本に聞いたらしくて、下の名前で呼ぼうって決めたから」
わたしは今朝のことで、このことは2人に言っていなかった。



