お前がいる場所が、好き。Ⅰ


「おはよー、沙織。っていうか、もしかして今話してたの、栗原さん?」



後ろを向くと、美咲が近づいてきた。
美咲が今、桜花ちゃんのことを言った。彼女と知り合いなのだろうか。



「えっ、彼女のこと知ってるの?」



「うん。すごく綺麗で可愛い子でしょ? 彼女、人気あるんだよ」



……え。ちょっと待って。人気のある、栗原さんって。



「うちの学校で大人気の栗原さんって、彼女のことだったの!?」



「そうだよ? まず、この学校に『栗原』って苗字の人、他にいないもん」



桜花ちゃん、だったのか。知らないうちに、わたしは随分すごい人と話していたんだな。


確かに寺本だって、桜花ちゃんは小学校・中学校でモテていた、と言っていた。
だから、高校で彼女が人気者なのも、全くおかしくない。


だけど桜花ちゃん本人は、寺本が好きっぽいし……。


なんだか複雑だな。



「そ、そうなんだ」



「2人とも、何やってるの?」



奈緒がポニーテールを揺らしながら話しかけてきた。



「沙織が、栗原さんとここで何か話してたっぽいの」



「栗原さんって、あの男子に人気のすっごい美人の?」



奈緒も桜花ちゃんが人気者だということを知っていたのか。



「そう!」



「何を話してたの?」



美咲が頷いてから、奈緒はわたしの顔をしっかりと見た。



「実はさ……」



わたしは、奈緒と美咲に桜花ちゃんのことを全部話した。



「寺本の知り合い?」



奈緒が聞き返してきたのでわたしは、うん、と頷いた。