「おはよー、沙織。っていうか、もしかして今話してたの、栗原さん?」
後ろを向くと、美咲が近づいてきた。
美咲が今、桜花ちゃんのことを言った。彼女と知り合いなのだろうか。
「えっ、彼女のこと知ってるの?」
「うん。すごく綺麗で可愛い子でしょ? 彼女、人気あるんだよ」
……え。ちょっと待って。人気のある、栗原さんって。
「うちの学校で大人気の栗原さんって、彼女のことだったの!?」
「そうだよ? まず、この学校に『栗原』って苗字の人、他にいないもん」
桜花ちゃん、だったのか。知らないうちに、わたしは随分すごい人と話していたんだな。
確かに寺本だって、桜花ちゃんは小学校・中学校でモテていた、と言っていた。
だから、高校で彼女が人気者なのも、全くおかしくない。
だけど桜花ちゃん本人は、寺本が好きっぽいし……。
なんだか複雑だな。
「そ、そうなんだ」
「2人とも、何やってるの?」
奈緒がポニーテールを揺らしながら話しかけてきた。
「沙織が、栗原さんとここで何か話してたっぽいの」
「栗原さんって、あの男子に人気のすっごい美人の?」
奈緒も桜花ちゃんが人気者だということを知っていたのか。
「そう!」
「何を話してたの?」
美咲が頷いてから、奈緒はわたしの顔をしっかりと見た。
「実はさ……」
わたしは、奈緒と美咲に桜花ちゃんのことを全部話した。
「寺本の知り合い?」
奈緒が聞き返してきたのでわたしは、うん、と頷いた。



