「それで、どうしたの?」
わたしが聞くと、栗原さんはそうだった、というように、
「聞きたいことがあるんだった! 増山さんと陸男くんって、どういう関係なの?」
と聞いてきた。
「塾の友達……かな。ほとんど塾でしか会わないし」
塾以外では、あの湖だ。
最近行っていないけれど、一応それ以外ではどこにも寺本とわたしは会っていない。
「良かったー! ありがとうね!」
また花が咲いたように、笑う栗原さん。
けれど、何について良かったと言っているのかさっぱり分からない。
「え? 何が良かったの?」
「ううん、なんでもない! ありがとうね、増山さん!」
栗原さんはそう言って、楽しげに去っていこうとした。
「あの、栗原さん?」
「んー?」
明るい顔のまま、栗原さんは振り返った。
「その、栗原さん……」
「名前、沙織だよね? 沙織ちゃんって呼んでもいいかな?」
栗原さんは、寺本とよく会うの、聞こうとしたら、彼女は遮った。
「あ……。全然大丈夫ですけど……」
「ありがとう! じゃ、わたしも桜花でいいから!」
栗原さん、もとい桜花ちゃんは、鼻歌を歌いながらどこかへ行ってしまった。



