お前がいる場所が、好き。Ⅰ


「それで、どうしたの?」



わたしが聞くと、栗原さんはそうだった、というように、



「聞きたいことがあるんだった! 増山さんと陸男くんって、どういう関係なの?」



と聞いてきた。



「塾の友達……かな。ほとんど塾でしか会わないし」



塾以外では、あの湖だ。
最近行っていないけれど、一応それ以外ではどこにも寺本とわたしは会っていない。



「良かったー! ありがとうね!」



また花が咲いたように、笑う栗原さん。
けれど、何について良かったと言っているのかさっぱり分からない。



「え? 何が良かったの?」



「ううん、なんでもない! ありがとうね、増山さん!」



栗原さんはそう言って、楽しげに去っていこうとした。



「あの、栗原さん?」



「んー?」



明るい顔のまま、栗原さんは振り返った。



「その、栗原さん……」



「名前、沙織だよね? 沙織ちゃんって呼んでもいいかな?」



栗原さんは、寺本とよく会うの、聞こうとしたら、彼女は遮った。



「あ……。全然大丈夫ですけど……」



「ありがとう! じゃ、わたしも桜花でいいから!」



栗原さん、もとい桜花ちゃんは、鼻歌を歌いながらどこかへ行ってしまった。