お前がいる場所が、好き。Ⅰ


翌日。わたしは学校に着いて、教室に向かおうとすると、



「増山、さん?」



と、美咲でも奈緒でもない声が聞こえた。誰の声なのか分からず、辺りを見回すと、わたしは息を呑んだ。



「増山 沙織さん?」



小さい顔をしていて、黒くて綺麗なストレートヘア、上品なピンク色をした唇。



「え……。はい」



そう、栗原さんが立っていたのだ。



「わたし、分かるかな? 栗原 桜花。昨日……」



「うん、1回だけ会ったよね」



わたしがぎこちなく言うと、昨日の寺本と会った時のように、彼女はぱあっと顔を輝かせた。



「そうそう! 良かったぁ、覚えてくれてて」



昨日のことなんだし、しかもこういう美少女を簡単には忘れられないのである。


そもそも、なんで栗原さんはわたしのフルネームを知っているのだろう。


わたしの心を読んだように彼女は、



「あっ、急にごめんね? 陸男くんに聞いて、増山さんの名前、聞いちゃってたんだ」



と言った。



「あっ、大丈夫です……」



「わたし、小学校と中学校の時に陸男くんと同じ学校だったの。今は、もう違うんだけどね」



寂しそうに目を伏せる、栗原さん。もしかして、寺本のことを好きなのだろうか。


それはさておき、栗原さんが言ったことに関しては、もちろん知っている。



「まさか昨日会った増山さんが、わたしと同じ学校の人だと思わなかった」



わたしだって、うちの学校の栗原さんだと思わなかった。