わたしと寺本の帰り道が別れた。
「じゃあな、増山」
「うん、じゃあね!」
栗原 桜花さん。
確か、どこかで聞いたことがあるような気がする。
いつだったかな。
長い黒髪、薄いピンク色の唇をした小顔の女の子。
けれど、本当にあの女の子は、わたしの聞いたことがある栗原さんなのだろうか。
栗原さんという、同姓の別人かもしれない。実際わたしは、その栗原さんと一度も話したことがないので、その可能性も低くはない。
いつ、どこだったかが、どうしても思い出すことができない。
あー、考えてもきりがない。
とにかく、早く帰らないとまたお母さんに心配をかけることになるんだから、一旦深く考えることはやめよう。
わたしは、家の方へ少し早歩きで行った。



