お前がいる場所が、好き。Ⅰ


わたしと寺本の帰り道が別れた。



「じゃあな、増山」



「うん、じゃあね!」



栗原 桜花さん。
確か、どこかで聞いたことがあるような気がする。


いつだったかな。
長い黒髪、薄いピンク色の唇をした小顔の女の子。


けれど、本当にあの女の子は、わたしの聞いたことがある栗原さんなのだろうか。


栗原さんという、同姓の別人かもしれない。実際わたしは、その栗原さんと一度も話したことがないので、その可能性も低くはない。


いつ、どこだったかが、どうしても思い出すことができない。


あー、考えてもきりがない。


とにかく、早く帰らないとまたお母さんに心配をかけることになるんだから、一旦深く考えることはやめよう。


わたしは、家の方へ少し早歩きで行った。