「川野、また桜花にあんな顔させて……」



知世ちゃんは、険しい顔をしてわなわなと震え出した。



「知世ちゃん……」



「絶対に思い知らせてやる! 桜花のこと、反省してないなんてあり得ない!」



さっきの悲しそうな静かな声とは、違った、低い声で知世ちゃんは言った。



「沙織ちゃん! 桜花を絶対に守りたいの! これ以上、桜花には絶対に辛い思いをさせたくないの! 協力して、お願い!」



真剣そのものの目で、知世ちゃんは言った。
そういえば昨日、わたしは寺本に似たようなことをお願いした。



『桜花ちゃんのこと、守ってあげて』



自分でも弱々しい感じで言っていたのが分かるくらい、小さな声でお願いしたんだった。


真剣な目でわたしを見つめる彼女から、川野くんに対しての怒りと、桜花ちゃんを思う気持ちが伝わってくる。


桜花ちゃんが奈緒や美咲だった場合では、きっとわたしは今の知世ちゃんのようになっているだろう。



「分かった……」



わたしは、ぶるぶると震える唇でそう答えるしかなかった。