「それで、沙織ちゃんに聞きたいことがあるの」



知世ちゃんは、少しだけ間を開けて言った。



「え? なあに?」



「桜花が最近おかしくて。笑顔もわざとらしいというか、不自然というか……。とにかく元カレのことで苦しんでた時と似たような感じで……」



最近、という言葉がわたしの頭にひっかかった。


桜花ちゃんは、学校に来ているのだろうか。やっぱり、わたしがただ見ていないだけなのだろうか。



「あれ、桜花ちゃんっているの? 最近見かけないけど……」



「ずっと学校休んでるから、お見舞いに行ってるの。だから、あたしは毎日桜花と会ってるんだ」



なんだ、そういう意味だったのか。
やっぱり、桜花ちゃんの姿を最近見ないというのは、わたしだけじゃなかったのか。



「そうなんだ。それで、気づいてたんだね……」



「昔から仲良かったから。そういうのは気づけるんだ。何か知らないかな?」



わたしは、川野くんのことを全て話した。


きっと、桜花ちゃんは知世ちゃんに心配かけたくなくてずっと黙っているんだろう。



「あー、なんてことが! 川野とかに関することなのかと思ったけど、まさかそんなことになってたなんて……」



知世ちゃんは、その場で悔しそうに嘆きながら頭を抱えた。



「だ、大丈夫?」



わたしが彼女の肩にそっと触れると、なんとかね、と言いながら知世ちゃんは再び顔を上げた。