そんな彼を見て、わたしも同じように下を向いて話し始めた。



「寺本と川野くんって、知り合いだったのね……」



「栗原と同じ、小学校も中学校も一緒だった奴なんだよ。小学生の頃、栗原と川野が一緒にいるところなんてほとんど見なかったから。中学になって、ああなるとは思わなかったよ」



まだ落ち着いていないのか、寺本は眉をひそめて、口をへの字にしている。


川野くんのことをを丸く収めるのは、結構難しそうだ。桜花ちゃんだって、池に落とされることよりもひどいことをされるかもしれない。



「……ねえ、守ってあげて?」



わたしの口から、そんな言葉が出てきた。



「ん?」



「桜花ちゃんのこと、守ってあげて」



桜花ちゃんのことを1番守れるのは、きっと寺本だとわたしは思った。



「なんで俺が?」



「決まってるじゃない。池に落とされた桜花ちゃんを助けたのは、寺本なんでしょ? だから、寺本が守ってあげるのが1番だよ」



「増山、それ無理だよ」



まるで諦めているかのような表情で、立ち止まり寺本は首を横に振った。



「振られた相手に守ってもらうとか、それって……。栗原のこと、もっと傷つけるだろ……」



力をなくした声で、彼は言った。


やっぱり、桜花ちゃんのことを大切にしたいという彼の気持ちは本物なんだ。彼女はもちろん、寺本も気の毒で、わたしは何も言えなかった。