「桜花ちゃん!」
放課後、わたしは下校中の桜花ちゃんの背中を見つけ、大声をあげた。
黒くて長い髪を揺らしながら、桜花ちゃんは振り返ってくれた。
「沙織ちゃん!」
わたしは、桜花ちゃんのところへ走り出した。
「あの……。本当にごめんなさい!」
わたしが追いついたとほぼ同時に、そう言いながら、桜花ちゃんは頭を下げた。
「もう謝らなくていいよ。親友たちとも話した。1番悪いのは、桜花ちゃんの元カレ_____川野くんじゃないかなって思った」
わたしは口ごもりながら、会ったことも話したこともない、川野くんの名前を出した。
「修二くんが?」
頭を上げた桜花ちゃんは、目を丸くした。
「そうだよ。修二くんのせいで、桜花ちゃんは辛い目にあったんだもの」
「あれ? そこにいるのは、もしかして桜花か?」
わたしが言い終わったと同時に、桜花ちゃんより20センチくらい背の高い男の人が近づいてきた。
学ランを着ているので、学生ということが分かる。
「やっぱり桜花だー! いやー、久しぶり!」
うちの学校の人じゃない。
こんな人は、うちの学校には絶対いなかったはずだ。学ランは本当にうちの学校の男子が着ているのと似ているけれど、よく見るとところどころ違う部分がある。
一見、明るくて爽やかな笑顔だけど、なんだか変だった。
どう表現したらいいか分からないけれど、感じ悪い。



